
名古屋外国語大学
ダニエル・ロッチマン首席領事講演 12/7/07
どうもありがとうございました。名古屋アメリカ領事館のロッチマンです。
本日は こうやって 名古屋外国語大学でお話をさせて頂く機会を得て、大変感謝してます。また、本校は海外からの留学生、また外国で勉強をしてきた日本人学生の受け入れを積極的に行い、国際的な取り組みをされていると お聞きしており、大変 嬉しく思っています。
今日は米国と日本、そして中部との関係について 少しお話しをしたいと思います。現在、日米両国の関係は、多くの点で、これまでで最も良い状態にある と言えます。皆さんはお若いので ご存じないかもしれませんが、私が学生の頃には 日米に関するニュースというと、
経済摩擦、いわゆる貿易戦争のことが大半を占めていました。オレンジの輸入に始まり、自動車、そしてトイザラスに至るまで、厳しい交渉と対立ばかりでした。現在このような対立はほとんどなくなりました。今でも、時おり 牛肉問題など、意見の不一致もありますが、以前と比較すると はるかに頻度が少なく、両国民の感情もずっと落ち着いています。
通商摩擦は少なくなり、日米の経済関係は大いに拡大しました。例えば、名古屋港からの輸出品の 最も大きな顧客は米国であり、第2位である中国の 2.5倍もの製品を買っています。また、トヨタ自動車やデンソー、ヤマザキマザック、そしてブラザーなど、多くの名古屋地区の企業は、米国に大きな投資を行い、生産工場や研究開発の施設を持っています。この20年ほどの間に、米国における海外からの直接投資に対する考えや態度は 本当に劇的に変化しました。先ほど申し上げた、貿易戦争の時代には、日本や他の外国企業が米国の会社を買収したり、工場を建てたりすることを、多くのアメリカ人は脅威として見ていました。しかし今では、ほとんどのアメリカ人は 外国からの直接投資は、米国の成長を促し、競争力と雇用を増大する重要な効果をもたらすことをよく理解しています。
それとは逆方向、つまり米国から中部への投資やビジネス量も、現在これまでで最も大きくなっています。米国と同様に、今ではこの地域の県や市、そして財界の人たちも、外国からの直接投資を歓迎し、そういった投資を誘致しようと大きな努力を払っています。この地域は、日本の自動車産業の中心であり、多くのアメリカの自動車部品メーカーは 事務所や工場を 名古屋周辺に作っています。これらの会社は、トランスミッションのタイミングベルト、カーステレオ、プラスティック製品などを 日本の自動車メーカー向けに生産しています。彼らは、自動車メーカーと商売をするためには、彼らの製品が 車の開発段階から 組み込まれるようにするのが 一番良い方法であること、そのためには現地にスタッフをおいて ビジネスをするのが非常に重要であることを 良く理解しているからです。
また、自動車以外の分野では、航空宇宙産業において 日米は深い関係を構築しています。ボーイングや他の飛行機メーカーは、非常に多くの部品を名古屋地域で調達しています。ボーイングの主要な旅客機のたくさんの部品はこの地域で作られ、ボーイングの次世代旅客機787ドリームライナーの約35%もの部分が愛知県や岐阜県で作られています。この最新鋭機は、これまでのどの旅客機とも違う方法で製造され、非常に興味深いものです。今日 私たちが飛んでいる飛行機はアルミニウムで作られていますが、この787はカーボンの複合材で作られているのです。ですから、2009年からはビールの缶と同じアルミではなく、テニスラケットのような素材で出来ている飛行機に乗って飛ぶことができる訳です。翼や胴体の多くの部品はこの
名古屋地域で生産されています。
米国が日本製自動車の最大の顧客であるのと同じように、日本はアメリカの飛行機の最大の輸出先なのです。
この他の分野でも、米国と中部の経済関係はますます深まっています。皆さんの使っている 携帯電話やMP3音楽プレーヤー、デジタルカメラ、そしてコンピューターに入っているフラッシュメモリーは、三重県にある日本の東芝とアメリカのサンディスク社の合弁工場で作られたものかも知れません。このメモリー工場の規模はものすごく大きく、日米の両社が共同して生産施設への投資を行うことは、大変意味があり メリットがあります。その三重県のフラッシュメモリーの工場の規模がどれくらい大きいか少し説明しますと、まず、その敷地には4つの独立した建屋がありますが、その中の最新鋭で最も大きな工場の総生産量を他の国 のフラッシュメモリー総生産量と比較すると、フランスの次に位置し、アイルランドより大きく、世界の8番目になるほど大きな規模です。これほど大きな投資となると、日米両国二つの会社の協力がなければ 不可能だったでしょう。そして、これがいま 世界経済が進んでいる方向であるように思われます。世界の多くの主要な経済プロジェクトは、ひとつの会社単独で行うには、規模が大き過ぎるか、または複雑過ぎます。時には、ひとつの国の単位で競争して行くことさえ無理なことがあります。
ここで日米の政治的な関係に目を向けると、ここでも 米国にとって世界中で日本ほど 最良の友人は他にありません。日米両国は、民主主義、人権、そして開かれた経済などの点で共通の価値観を持っています。安全保障の面では、日米は同盟条約を結んでいます。その条約のもと、日本は 米国の基地を受け入れ、米国は日本の平和を守ることを約束しあっています。米国側としては、日本のインドネシアからアフリカにかけての地域での災害や紛争の後の活動、インド洋におけるドラッグや武器を運ぶ船の取り締まりに対する支援活動も含め、近年特に重要度を増しつつある日本の多大な国際貢献に感謝しています。
時々、米国がアジアから手を引き、日本との緊密な関係から遠ざかっていくように 言う人がいます。米国の政治的なリーダーが変わったり、米国の軍の配置転換があると、しばしばこのような考えが助長されるようですが、それは全く事実と異なっています。米国はアジアを軽視するどころか、実際は以前より 深く関わっています。
日米の安全保障体制は、米国とソビエト連邦(ソ連)がライバルとして張り合っていた、冷戦の時代とは、近年変わってきました。今日の日米同盟は、アジア地域における脅威の変化と、日本が自国の防衛において より大きな役割を果たすための能力と 積極性を反映するものとなりつつあります。日米両国は、ミサイル防衛など 新しい分野で協力しつつ、日本における米軍の配置転換を 共同して推進しています。
シーファー駐日米国大使は、先月東京での講演で、次のように述べました。第二次大戦後、アジアの安全保障体制は「ハブとスポーク」のようなモデルであった。つまり、米国がハブ‐中心となり、他の国々とのスポークとなる 2国間同盟を構築したが、それらの国同士は必ずしも協力関係になかった。そのような同盟体制は、長年に渡りアジア地域の安全保障の要となるもの であった。しかし、これからは、これまでのハブとスポークのようなものではなく、米国の同盟国の間で取り組みと協力を強化し、多国間の関係をさらに充実して いきたい。そして、米国と、日本、そして オーストラリアとの三カ国協議はその良い例であると。
この地域において緊急な課題となっている、北朝鮮と核拡散などの問題は、一国あるいは二国の力では、それらの国がいかに裕福で力を持っていたとしても 解決できるものではありません。そこで、それらの問題に対処するため、利益を共有する国々が集まり、それぞれの得意分野で力を発揮し、協力しあい 目的を実現することが必要となるのです。
我々が直面する多くの課題の中で、自由で 安全な貿易航路と インフラを確保することがあげられます。皆さんよくご存知のように、日本の産業によって使用されるエネルギー資源と 原材料のほとんどは 外国から運ばれて来ます。日本の輸出産業のため 安全で確実な航路を確保することは 日本経済にとって非常に重要な問題です。同時に、国際間の船舶輸送がテロの目的のために使われないようにすることも大事なことです。そいったことが起こらないようにする 取り組みのひとつ として、大量破壊兵器などの武器がコンテナーに隠されて密輸されないように、日米両国は協力して監視をしています。
これは日米が治安と安全を 確かなものとするため協力 しあっていることの ほんのひとつの例に 過ぎません。しかし、ここでより大きな目で、日米、そしてこの地域の安全と安定を保つための協力体制を見てみると、日米両国は同盟関係全般を見直し、いかに改善するか、この数年間検討を重ねたことが わかります。両国は多くの課題に目を向けました。日米両国は相互の利益を守るために 何が一緒にできるのか、また他の国とは どうか; これから将来に向けて起こり得る難問や不安に対して我々は適切な能力を個々に、あるいは総合力として保有しているのか; そして我々の共通な目的を実現するために適切な仕組みと基盤は持っているのか、 などなどです。
これらの疑問に対する答えのひとつは、日本における米軍の基地の再編です。皆さんよくご存知のように、日米両国は米軍基地のある場所を見直し、どのような基地が日本にあるべきか、そしてそれらがどこにあるべきか、検討を続けています。先ほど私が申し上げた、いくつかの課題は その決定プロセスにおいて大変大切なことです。しかし、その決定をする上で、二つの基本的な原則があります。それは、その再編が同盟の抑止力を維持し 強固なものにするものであること、そして日本で米軍基地に場所を提供して下さる地元の方の負担をできるだけ軽減するような形で なされるということです。
現在その共同作業が進行していますが、将来の在日米軍のあり方は、今のものとは異なるでしょう。ですから、このことから、日米同盟関係のように安定して強固な体制でも、両国そして地域の状況に応じて変化していくものであるということが見て取れると思います。
そこで、ここにお集まりの皆さんのような方たちの出番となるわけです。我々の関係は現在の状況に順応し、将来は変わっていきます。日米両国、そして世界のために、皆さんのように、国際関係に興味を持ち、他の国の言葉や それらの国、それから国際政治や経済問題について、進んで学ぼうとする若い人たちの存在は大変重要です。こうした知識や才能は、日米両国、そして日本と世界中の国々との関係を発展させる上で、必要なものです。
ここまで、経済、政治、そして安全保障などの事柄について話をしてきました。それらのことは全て大切なことばかりです。しかし、我々が日米関係を考える時、その関係はもっと深く広範なものであるということを忘れてはいけません。
様々な知られざる場面で、日米両国は相互の利益だけでなく、世界全体の利益のためにも協力しています。
「日米水協力 イニシアティブ」では、カリブ海、アフリカ、アジアそれぞれの地域で、貧困層にとって最も重要な資源である きれいな水の供給し、公衆衛生を改善するため 日米両国は共同して取り組んでいます。
不幸にも自然災害の被害者となった途上国の人々のために、両国は支援活動を広げています。2004年のスマトラ沖 地震津波、2005年のパキスタン地震、2006年のジャワ島中部地震などの経験をふまえ、将来の災害時に備えるために日米は、共同訓練や援助の協調体制を進めてきました。
また、災害が起こる、起こらないにかかわらず、この地球に住むものとして地球の環境を理解し、資源を適正に利用することは大切なことです。これについても日米両国は広範囲にわたり、気候変動や炭素ガス排出問題、そして燃料節約型エンジン、超伝導、代替燃料など、多くの分野で共同研究を行っています。
日米関係と言えば 首脳会談に代表されるような、政府高官レベルでの協議がつい 頭に浮かびがち だと思います。しかしそれは、日米関係のほんの一局面 でしかありません。さらに細かいところに目を向けて見ると、政府間で行われる協議以上に、人と人との交流が私たちを結びつける鍵となっているのです。例えば、姉妹都市関係では、、愛知県だけでも、名古屋市、豊田市、安城市、小牧市、他多くの市町村が、米国に姉妹都市をつくり、草の根の交流を続けています。
また個人のレベルでは、 戦後米国に留学した日本人学生の数と、日本に留学したアメリカ人学生の数を合わせると、百万人を超えています。
これらの交換留学生のおかげで、国と国との間の情報がスムースに行き来するようになります。現在、留学生が勉強する科目のうち、最も重要なもののひとつに、気候変動があげられます。そして排出ガスや気候変動の問題に関して、世界の国の中で、米国の評判は余り良くないということを 私はよく知っています。しかし、これらの批判は必ずしも当たっているわけではありません。
現在、エネルギーの確保と気候変動は我々にとって大変重要な課題です。米国としても、この問題を深刻にとらえ、規制強化や、官民一体のパートナーシップ、奨励金、そして新技術開発に対して投資を行うなどして、取り組んでいます。米国は世界で最もエネルギーを消費している国ですが、温室ガス排出の削減のため世界のリードする必要性をよく自覚しています。しかし、一方で それは経済成長を損なったり、国家が国民に繁栄をもたらすことを妨げたりするようなものであっては ならないと考えています。
ところで、今週、世界の指導者たちはバリ島に集まり、2012年に期限を迎える京都議定書をどのように改めるか討議する予定です。
米国は2001年以来、これまでで370億ドル、つまり日本円で4兆円以上ものお金を、気象科学、技術開発、それから奨励金や国際援助に 使ってきました。そして今、その投資は良い結果を生み出しつつあります。米国のエネルギー情報局の2006年最終レポートによると、米国の温室ガス排出量は2005年のレベルより1.5%下がり、一方 経済は2.9%の成長を果たしました。これは、温室ガス排出量がG.D.P.比実質4.2% 減ったことを意味し、1985年以来 年間で最大の改善となりました。これにより、米国政府が2002年に設定した2012年までに温室ガス排出量を18%削減 するというゴールを前倒しすることになります。
これらのことは、非常に大きな問題の解決のためのほんの小さなことですが、米国、日本、そして世界各国はこの問題を真剣に考えています。今後この問題を解決するためには、何十年もかかるでしょう。しかし、世界の第1位と2位の経済大国、そして、高い技術力を持つ国として、日米両国はその努力をする役目を持っているのです。
私は、ここにおいでの方々が、将来エネルギーや排出ガスの問題を解決するため重要な役割を果たされることを期待しています。また一方で、今まだ 見えていなくても、もっと多くの課題や難問が起こってくると思います。しかし、その時に、今皆さんが受けていらっしゃる教育がきっと役に立つと信じています。ですから、今一度、皆さんが世界のことや、国際関係を学ぼうとしているという、そのことがいかに大切であるか、よく理解して頂きたいと思います。そして、今日 私の日米関係についての話を聞きに来て下さったことにお礼を申しあげたいと思います。
では、これから質疑応答に入りたいと思います。もし、質問があれば、英語でも、あるいは日本語でも結構です。ただし、私は今日のスピーチを日本語でして少し疲れてしまったので、応えは英語でさせてもらいたいと思います。よろしくお願いします。
どうも、ありがとうございました。

